2009年6月9日火曜日

山深く、人に会う。1@徳島



目的地の剣山へ向けて15分ほど進んだところで、
忘れていたことを思い出しました。

昨日キャンプ場に行く途中に通りかかった神社へ
朝寄っていくつもりだったんだ。

鳥居越しに見えた、あの立派な夫婦杉に会いたい。
その一心で引き返すと、神主さんが掃き掃除をして
いるところでした。

さほど広くない境内に、風格のある木が何本も。
聞けば樹齢は千年、二千年にものぼるそう。
看板も何も立てていない静かな静かな神社ですが、
こんなにも素晴らしい場所があったのかと感動。

「ここへ来て立ってご覧なさい」
神主さんの自宅の庭に呼ばれました。
「ここから見えるのは千年前と変わらぬ林の景色。
ここにいると万葉の時分と会話ができるんです」

家から一枚の紙切れを持ち出し、私に万葉集の中の
一句を教えてくれました。

人はよし 思ひ止むとも 玉かずら
影に見えつつ 忘らえぬかも     倭太后

「あなたとあなたの好きな人にも置き換えられる」
そう言った神主さん。先立った奥様のことを想って
らっしゃるのだなとその言葉から伝わってきて、
胸が熱くなりました。

その句と訳と、神主さん自身が詠んだ句が書かれた
封筒の裏紙。ご自宅の住所も書かれていたのでそのまま
いただきました。大切にします。もう、すぐにでも
ハガキを出すことにしましょう。

私がここにやって来て、このような出会いがあって。
それは偶然でもなんでもないことのように思えるのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿